デルトラ考察 ジョーカーの正体~ミスリードとヒント~
こんにちは! てるてるです(・ω・。)
以下ネタバレ注意☆
ミスリード
しかし、リーフたちとことあるごとに対立したかと思えば(リスメア競技大会の脅しの紙切れ、隠れ家の監視室に閉じ込めるなど)、
リーフたちを助ける(リスメア競技大会後に憲兵たちに捕まったリーフたちを助けだしたり、スカールからかばったり)こともある、敵なのか味方なのかわからない、謎の存在です。
「帰還」ではそんな彼の正体がわかりますが、作者のエミリー・ロッダさんにより、2回のミスリードが行われています。
1.ジョーカーは影の大王の手下?
これは、リーフたち3人とルーカスが、ベタクサ村からデルの街の広場に到着したときのシーンです。
ここで、支柱に縛り付けられたデインが憲兵たちに燃やされそうになります。
そして、仲間たちは全員捕まっている――ただ一人、ジョーカーを除いて。
一人だけ捕まっていないということは、そいつが敵と通じているということです。
つまり、ジョーカーこそがスパイだと。
「――なるほど、そういうことか」と言ったバルダ同様、読者も、ジョーカーこそがスパイで、影の大王の手下だと思い込むのです。
2.ジョーカーはエンドン王?
ジョーカーは真の影の大王のスパイ、デインを倒し損ねて逆にやられてしまいます。
塚の上から転げ落ち、頭を強く打ったことで、彼の記憶が戻ってきます。
彼は追体験をするように、うわ言で色々なことを話し始めました。
"「なあ、おまえ……むこうからは……かくまえないという返事がもどってきたよ……」 まるで手紙をにぎりしめるように、指が動く。「しかたがない…… ひきかえそう……デルの東へ逃げよう……西ではなく……」" 岩崎書店 2003年 13 鍛冶場 p176)
これまで心だけリーフたちと共に冒険をしてきた読者は、「匿えないという返事」「手紙」「もともと西へ逃げようとしていた」という3つのキーワードから、これは、デルトラのベルトが破壊され、影の大王勢力がデルトラに侵入してきた日のできごとで、彼はエンドン国王なのでは? と疑いだします。
"「ああ……そのとおりさ。だが……いまはどこへいっても危険だよ……気をつければ、 だいじょうぶだ。おれたちは……生きのびられる。 これから生まれる子もだ。この子は、きっと……強い子に育つ。 そして時がくれば……」" 岩崎書店 2003年 13 鍛冶場 p177〜178)
この「そして時がくれば……」で途切れてしまうのが意味深です。
リーフやバルダ、そして読者は「そして時がくれば……」の後には、「この子は良き国王になるだろう」とか、そういうニュアンスのセリフが来るのではないかと期待したはずです。
そして、彼の正体はエンドン国王だと、確実に読者に思い込ませる重大な証拠が、ジャスミンの持っていた「くまさんおきて」で始まる、城の地下道を伝える歌の書かれた紙切れです。
"エンドン国王が子どものときに描いた絵と歌が、ここにある。王家の人びとだけに、城の秘密の地下道を語り伝える歌。 ほかでもないこの部屋で、リーフは父から、 エンドン国王とシャーン王妃が城を脱出したときのようすを、 何度もきかされた。この歌のことも。 父の話がうそではなかったという証拠が、いま、ここにある。 そして、ジャスミンがそれをもっていたのだ。長年、 肌身はなさずに。" 岩崎書店 2003年 13 鍛冶場 p181)
この決定的な証拠により、ジョーカーがエンドン国王だったんだ! と読者もリーフとともに驚愕します。
しかし、ジャスミンがベルトをつけても発光しない……。
これでまた、ジョーカーの正体は闇の中となってしまいます。
ジョーカーの正体のヒント
ジョーカーの正体は、エンドン国王の親友、ジャードでした。
小説を何度も読み返していくうちに、あることに気づきました。
なんと、ジョーカーの正体について、ちょこっとヒントが出ているのです!
それは、ジャスミンと、彼女の両親についての記述を細かく見ていけば、「おお! こんなところにヒントが!」と気づくことができます。
1.アンナさんの描写
ジャスミンのお母さんはアンナさんです。
ジャードが城から追い出されて、鍛冶場に転がり込んだ日の描写。
アンナさんとして登場。
"クリアンが声をかけると、さっそくやさしい顔の少女が走り出てきた。" 岩崎書店 2002年 4 鍛冶場 p43)
沈黙の森でトパーズを手に入れたときの描写。
ジャスミンの母として登場。
"霧のなかから、ゆらゆらした白いものがあらわれた。それは、やさしい顔の女性の姿になった。" 岩崎書店 2002年 16 トパーズ p181〜182)
ここで注目したいのは、どちらにも「やさしい顔」という描写が入っていることです。
しかし、優しそうな雰囲気の女性はデルトラ中にゴマンといることでしょう。
「やさしい顔」という同じ描写を使いながら、同一人物だと読者に気づかせないのです。
気づくようで、なかなか気づきにくいヒントとなっています。
2.ジャードとジャスミンのセリフ
ジャスミンのお父さんはジャードです。
ジャードとジャスミン、実は決定的な類似点があるのです!
それは彼らのセリフに隠れていました。
まずはジャスミンから見ていきます。
鍛冶場でジョーカーの記憶が戻ったあと、リーフは一人、以前使っていた自室に行きます。
その時憲兵団が鍛冶場へ突入してきたシーンで、彼女が言ったセリフがこちら。
"「近よらないで!」ジャスミンがさけんでいる。「近よらないでよ! こっちは三人しかいないのよ。そっちは十人もいるじゃない! 十人も!」 リーフははっとした。これはジャスミンからの合図だ。リーフに、きても無駄だ、近よるなと合図しているのだ。同時に、 憲兵たちには、この家にいるのはジャスミン、ジョーカー、 バルダの三人だけだと思わせようとしている。" 岩崎書店 2003年 13 鍛冶場 p185)
敵に向かって話してはいるけれど、味方へのメッセージにもなっている、機転のきいたセリフです。
読んでいて、ジャスミン頭いいな〜と思っておりました(笑)
しかし、このシリーズを一読した読者なら、ジャスミンのようなセリフ――つまり、敵に向かって話してはいるけれど、味方へのメッセージにもなっているセリフ――を一度見たことがあるはずです。
それが、こちら。
"「一対三だぞ、プランディン」ジャードはさけんだ。「ひとりの相手をしているうちに、あとのふたりは逃げるぞ!」 これは、エンドンへの合図でもあった。(ぼくがプランディンの相手をする。シャーンをつれて、逃げてくれ)" 岩崎書店 2002年 7 うらぎり p74〜75)
ええ、これジャードのセリフなのです!
ジョーカーがジャードだと特定できるヒントも実はあったんだよ!(てるてる調べ)
すごいね!
というお話でした。
ますますエミリー・ロッダさんを崇拝したくなっちゃったところで、今回の考察は終了です。
また会いましょう!
ではでは〜(`・ω・´)ノ